相続
相続人と連絡が取れない時の対処法は?手続きが進まない場合のリスクも徹底解説
相続は誰にでも起こりうることですが、いざ現実に起きると、ルールや手続きの方法に戸惑う方は少なくありません。
特に、相続人が複数いると、そのうちの何人かと連絡が取れず、相続手続きが進まないなどの悩みを抱えることも。
そこで本記事では、相続人と連絡が取れない場合にどうなるか、起こるリスクや、手続きを進めるための具体的な対処法を分かりやすく解説します。
本記事を読めば、相続に関するトラブルを未然に防ぎ、スムーズに相続手続きを進めるためのヒントが得られます。
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相続人と連絡が取れないと手続きは進まない
相続人と連絡が取れないと手続きは滞ります
相続はいつ発生するかわかりません。
もし相続人の中に音信不通の人がいた場合、連絡が取れない人がいるとどうなるでしょうか。
実は、相続手続きでは、相続人全員の同意が必要となるため、誰か一人でも連絡が取れない状態が続くと、遺産分割が進められません。
本章では、相続人と連絡が取れないまま放置するとどうなるのか、遺言書の有無による違いについて解説します。
- 遺言書があれば内容に従う
- 遺言書がなく連絡が取れない相続人がいると手続きが進まない
- 連絡が取れない相続人がいるままで協議しても無効になる
遺言書があれば内容に従う
被相続人が遺言書を残しており、財産の分け方が明確に指定されている場合には、記載された内容に従った手続きが可能です。
遺言書があるケースでは、他の相続人と連絡が取れなくても、遺言にもとづいて財産を取得する人が単独で手続きを進められます。
遺言書がなく連絡が取れない相続人がいると手続きが進まない
遺言書が存在しない場合、相続人全員が集まり「遺産分割協議」をおこない、財産の分配方法を話し合う必要があります。
遺言書がないケースでは、連絡が取れない相続人を抜いた状態の協議は法律で認められていません。
連絡が取れない相続人がいるままで協議しても無効になる
遺産分割協議は、法定相続人全員の参加と合意が前提条件であり、1人でも欠けた場合の協議は無効となってしまいます。
無効な遺産分割協議では、たとえ一部の相続人同士で合意しても法的効力を持ちません。
そのため、不動産の名義変更や預貯金の解約、株式の移転手続きなどは一切行えなくなります。
つまり、連絡が取れない相続人が1人でもいると、相続財産の管理や名義変更などの重要な手続きは進められません。
相続手続きは円滑に進められると理想ですが、思うように進まなくなってしまうでしょう。
相続人と連絡が取れないままにするリスクは?
相続人と連絡が取れないままにするとどうなるでしょうか
相続が発生したものの、相続人の中に連絡が取れない人がいる状況は珍しくありません。
例えば、親戚と疎遠になっていたり、長年海外に住んでいるなどが該当するケースです。
もし、相続人と連絡が取れないからといって、遺産分割をせずに放置するとどのようなリスクがあるでしょうか。
そこで本章では、相続人と連絡が取れない状態を放置して生じる具体的なリスクを解説します。
- 不動産が利用・処分できなくなる
- 財産の放置・無断使用・勝手な処分のリスク
- 預貯金の引き出しが難しくなる
不動産が利用・処分できなくなる
相続手続きが取れなくなった場合、問題となりやすいのが不動産です。
不動産の所有権は、相続が開始すると同時に、法定相続人全員の共有状態になります。
そのため、相続人の一人でも連絡が取れない状態だと、全員の同意がとれなくなり、名義変更や売却、賃貸契約などの手続きができません。
この状態を放置すると、固定資産税だけが課され続けたり、空き家のまま老朽化が進んで近隣トラブルを引き起こす恐れがあります。
さらに、不動産を担保にした融資や活用が一切できないため、結果、資産価値を有効に使えなくなってしまうでしょう。
財産の放置・無断使用・勝手な処分のリスク
連絡が取れない相続人がいるまま相続を放置すると、財産の管理責任があいまいになる恐れがあります。
結果、他の相続人や第三者が財産を無断で使用・売却してしまうリスクにつながるかもしれません。
例えば、相続人の一部が預金を引き出したり、不動産を独断で賃貸に出したりするケースです。
また、財産が放置されたままになると、管理不十分による損害も起きかねません。
例えば建物の老朽化や土地の荒廃、株式や投資信託の価値下落など、経済的損失が発生する可能性もあるでしょう。
相続人全員の同意が得られない状況では、財産を守るための行動も取れないため、結果的に資産価値の減少をまねく恐れがあります。
預貯金の引き出しが難しくなる
銀行預金や証券口座などの金融資産も、相続人の一人でも連絡が取れない場合には、払い戻しや名義変更ができません。
金融機関では、すべての相続人の同意と署名・押印を求めるのが原則です。
そのため、一部の相続人と連絡が取れない状態では、必要な書類がそろわず、手続きを進められなくなります。
故人の預貯金の引き出しができない場合、被相続人の葬儀費用や相続税の納税資金などを一時的に立て替えなければならないかもしれません。
そうなると、金銭的な負担が生じるかもしれません。
そのうえ、引き出せない状態が長期間続くと、金融資産が休眠預金扱いになる場合もあり、引き出しがさらに複雑になる可能性があります。
そうならないためにも、早期の対応が求められます。
相続税の申告・特例控除が使えなくなるリスク
相続税の申告期限は、被相続人の死亡から10カ月以内と定められています。
しかし、相続人と連絡が取れないまま遺産分割協議ができない場合、この期限までに申告や納税が間に合わないかもしれません。
さらに深刻なのは、小規模宅地等の特例や配偶者控除などの税制優遇が使えなくなる可能性がある点です。
これらの特例は、原則として正式な遺産分割が完了していなければ適用されないため、期限内に協議が整わないと多額の相続税を支払うことになるかもしれません。
また、期限を過ぎてからの申告は、無申告加算税や延滞税などのペナルティが課せられ、相続人全体の不利益になる可能性があります。
相続人と連絡が取れない場合の対処法

相続手続きを進めるうえで、相続人の中に音信不通で連絡が取れない人がいると、遺産分割協議がおこなえず手続きが止まってしまいます。
前章で述べたように、相続人全員の同意がない限り協議は成立しません。
そのため、連絡が取れない相続人が一人でもいると、財産の名義変更や預金の払い戻しなど、すべての相続手続きが滞ります。
では、このような場合に、どのようにして相続人と連絡を取ればよいでしょうか。
本章では、相続人の居場所や連絡先がわからない場合に取るべき具体的な対処法を解説します。
- 連絡先がわからない場合
- 手紙を出してみる
- 自宅へ訪問してみる
- 行方不明で連絡が取れない場合は、不在者財産管理人の選任を申し立てる
- 不仲で連絡が取れない場合は、遺産分割調停を申し立てる
- 生死不明で連絡が取れない場合は、失踪宣告をおこなう
連絡先がわからない場合
相続人の連絡先が不明で、どこに住んでいるのか分からない場合には、公的な記録から住所を確認できます。
基本的な方法は、「戸籍の附票(ふひょう)」を取得して現住所を調べる方法です。
戸籍附票とは、その人が住民登録を行った際の住所の履歴が記載されている公的書類で、相続人の現住所を特定する際に有用な資料となります。
もし、相続人の本籍地が分かっている場合には、その本籍地を管轄する市区町村役場で戸籍附票の交付を申請できます。
附票には、その人の過去から現在までの住所の履歴が記載されているため、転居を繰り返している場合でも最終的な住所を確認できるかもしれません。
戸籍附票を取得する場合の注意点
注意が必要なのは、戸籍附票は原則、本人またはその法定代理人しか取得できない点です。
そのため、相手がすでに独立して別の戸籍を持っている場合、附票の直接請求はできません。
この場合は、被相続人や自分の戸籍附票を取得し、その中に記載されている家族の情報を手がかりに相手の住所を特定する方法があります。
例えば、未婚の兄弟姉妹なら、被相続人の戸籍に一緒に記載されています。
被相続人の戸籍附票を請求すれば、相続人の住所を確認できる場合があります。
また、親子間など同一戸籍内にある場合は、自分の戸籍の附票を取得するだけで相手の住所が分かるかもしれません。
戸籍不評を取得しても居場所がわからない場合
戸籍附票でも居場所が分からない場合には、住民票の除票を確認したり、郵便の転送サービスを活用して連絡を取る方法もあります。
弁護士などの専門家を通じて、所在調査の依頼も可能です。
このように、まずは戸籍や住民票を通じて法的に正しいルートで住所を確認してみましょう。
手紙を出してみる
相続人の住所が判明した場合は、まず手紙を送って連絡を取ってみましょう。
長期間音信不通だった相続人の場合、被相続人との関係が良好でなかった可能性があります。
そのため、いきなり電話をかけたり訪問したりすると、不信感を抱かれたり、話し合いを拒絶されるかもしれません。
まずは、落ち着いて読める手紙で、丁寧に事情を伝えるようにしましょう。
手紙を出す場合の注意点
手紙には、被相続人が亡くなった点、相続手続きを進める必要がある点、遺産分割協議をおこなうために連絡を取りたい点などを、穏やかな言葉で説明します。
相手が感情的にならないよう、中立的で礼儀正しい文面を心がけましょう。
例えば、「急ぎ連絡をください」などの表現よりも、「ご都合の良い方法でご連絡いただければ幸いです」などの柔らかい言葉を使うとよいです。
手紙を送る際は、相手の立場や感情に十分配慮した対応が求められます。
特に、被相続人との関係が複雑な相続人に対しては、手紙のトーンをできる限り穏やかにし、感情よりも手続きで必要な点を伝えるよう意識しましょう。
コンタクトを取る際は感情的にならないよう努める
相続の話を進めるうえで避けたいのが、最初の段階で相手の不信感を招く行為です。
もし相手に「もう関わりたくない」と感じさせてしまうと、連絡を絶たれたり、感情的な対立に発展してしまうかもしれません。
さらに、相続放棄を検討している人なら、放棄の期限の3ヵ月が過ぎてしまうと、かえって本人の負担を増やしてしまう可能性もあります。
相手が相続協議に消極的な場合でも、あなたが誠実で冷静な態度を示せば、話し合いがスムーズに進む可能性が高まります。
また、手紙をきっかけに関係が改善し、協力的な姿勢を見せてくれるかもしれません。
そのため、相続問題では感情的な衝突を避け、信頼関係を築けるよう努めましょう。
自宅へ訪問してみる
手紙を送っても返答がない場合や、連絡が取れない状態が続く場合は、相続人の自宅を訪問してみる方法があります。
直接顔を合わせて話すと、誤解が解けたり、相手の事情を理解できるかもしれません。
ただし、訪問には細心の注意が必要です。
突然の訪問は相手に不快感や警戒心を与えるおそれがあるため、訪問の目的と態度には十分に配慮しましょう。
訪問時のポイント
訪問の際は、あくまで丁寧に事情を説明する姿勢が大切です。
「相続の件でご相談したい内容があり、お時間を少しいただければ幸いです」などの穏やかな言葉を選び、威圧的にならないように心がけましょう。
また、相手のプライバシーを尊重するためにも、訪問は日中の常識的な時間帯におこなうようにします。
突然の訪問で不在の場合は、ポストに手紙を残すなど、無理に接触を図らないほうが安全です。
訪問で配慮する点
訪問して相手と話ができた場合は、まず相続手続きの必要性や現状の共有を中心に説明しましょう。
いきなり遺産分割の具体的な話を持ち出すのはおすすめできません。
相手の感情を尊重し、被相続人との関係や相続への考え方を聞く姿勢を示すと、信頼関係が生まれやすくなります。
長い間連絡を取っていなかった場合には、急に訪ねて驚かせてしまい申し訳ありませんと一言添える配慮が必要です。
行方不明で連絡が取れない場合は、不在者財産管理人の選任を申し立てる
相続人の住所を調べても手紙が宛先不明で戻ってきたり、訪問しても転居していたりするケースでは、相続手続きが進められません。
この場合は、家庭裁判所へ「不在者財産管理人の選任申立て」をおこなう方法があります。
この制度は、生存している可能性が高いが行方が分からない相続人に対して有効な法的手段になるでしょう。
不在者財産管理人とは
不在者財産管理人とは、行方不明者に代わって財産を保全・管理する役割を担う人を指します。その主な職務は以下です。
- 行方不明者の財産調査
- 財産を適切に管理し、損害を防ぐ
- 財産の内容をまとめて家庭裁判所へ報告する
不在者財産管理人の権限
不在者財産管理人は本人の利益を守るために選任される存在で、勝手に財産を処分したり使用したりする行為は法律でも認められていません。
もし不正に財産を扱った場合、業務上横領罪に問われる可能性があります。
また、不在者財産管理人が不在者の代わりに遺産分割協議や不動産の売却などを行うには、家庭裁判所の「権限外行為の許可」を得なければなりません。
許可が下りてはじめて、相続人となり協議に参加可能になります。
選任から実際の許可が出るまでには数カ月かかる場合が多く、早めの対応が重要です。
不在者財産管理人の手続きに関して
不在者財産管理人の申立ては、不在者の最後に住民登録があった住所地を管轄する家庭裁判所でおこないます。
不在者財産管理人となれるのは通常、相続に直接関わらない第三者、または弁護士・司法書士などの専門家です。
相続人自身が不在者財産管理人になるのは認められていません。
申立てには、戸籍謄本、戸籍附票、不在者の財産を示す資料(不動産登記事項証明書、預貯金通帳の写しなど)を用意しましょう。
行方不明を証明できる資料、遺産目録などを提出する必要があります。
手続きにかかる費用は、収入印紙800円分と予納郵便切手が一般的です。
不仲で連絡が取れない場合は、遺産分割調停を申し立てる
住所や連絡先が分かっていても、意図的に連絡を無視されている場合には、家庭裁判所に遺産分割調停を申し立てる方法が有効です。
これは、行方不明ではなく、生存しているが話し合いに応じない相続人への対処で現実的な手段になります。
遺産分割調停を申し立てると、家庭裁判所が相手方の住所宛てに正式な呼び出し状を送付します。
この場合は連絡を拒否していた相続人でも無視できないため、出席に応じるでしょう。
特に、遺産分割協議に参加しなければ自分の主張が調停委員に伝わらず、不利な結果につながる可能性があるため、出席を選ぶ人が多いです。
調停は、中立的な調停委員が間に入って合意形成を目指す話し合いの場で、裁判ほど堅苦しくなく、家庭内トラブルを穏やかに解決するのが目的です。
ただし、ここで合意が得られなかった場合は遺産分割審判に移行し、最終的に裁判所が分割方法を判断する流れになります。
遺産分割調停をスムーズに進めるために
不仲な相続人が連絡を無視している場合、いきなり調停に進む前に、まずは遺産分割協議に参加しない行為への不利益を伝える方法も有効でしょう。
相続人が協議に参加しなければ、不動産の名義変更や預金の払い戻しが進まず、自分の相続分も確定しません。
こうした点を丁寧に説明した書面を送り、穏やかに協議への参加を促すのが第一歩です。
遺産分割調停に応じない場合
丁寧に説明しても、遺産分割調停に応じない場合には、弁護士に依頼して調整をおこなうのも効果的です。
弁護士が代理人となって相手に連絡を取ると、冷静に話し合えるかもしれません。
もし弁護士を介しても解決しない場合は、速やかに家庭裁判所へ調停を申し立てましょう。
遺産分割調停や審判の詳細は、裁判所の公式サイト(裁判所「遺産分割調停・審判」案内)で確認できます。
感情的な対立で相続が止まってしまう前に、早めに法的手続きを検討し、専門家へ相談しましょう。
参考:裁判所「遺産分割調停(審判)を申し立てる方へ」PDF
生死不明で連絡が取れない場合は、失踪宣告をおこなう
相続人の中に、長期間にわたって連絡が取れず、生死さえも分からない人がいる場合には、失踪宣告(しっそうせんこく)を利用できます。
これは、一定期間生死不明の状態が続いている人を、法律上で死亡したものとみなす制度です。
家庭裁判所へ申し立てをおこない、調査・審判を経て確定すると、その人物は法的に死亡扱いになり、相続手続きを進められます。
失踪宣告の種類
失踪宣告には、「普通失踪」と「危難失踪」の2種類があります。
普通失踪とは、行方不明のまま7年間生死が確認できない場合に認められるものです。
危難失踪は、戦地での従軍中、遭難事故、船舶の沈没、自然災害など、生命に危険が及ぶ状況下で行方不明となった場合に適用。
危難が去ってから1年経過すれば申し立てができます。
家庭裁判所に申し立てると、裁判所が失踪者の居場所や生死の確認をおこなうための調査を開始します。
調査によっても所在が確認できない場合、審判がおこなわれ、確定すればその時点で法律上の死亡と同じ効力が発生します。
つまり、その相続人は遺産分割協議に参加しなくてもよい状態となり、他の相続人だけで遺産分割手続きを進められるようになります。
失踪宣告確定後の注意点
失踪宣告が確定すると、その人を被相続人とする新たな相続が同時に発生します。行方不明者の相続と元々の被相続人の相続、2つの相続が重なるため、手続きが複雑になります。
もし、失踪宣告を受けた人に配偶者や子どもがいる場合は、その人たちが代わりに相続人となって協議に参加しなければなりません。
もし、失踪宣告後に本人が生存していると判明した場合には、宣告は取り消されます。
しかし、既に成立した相続手続きや財産の移転は有効とされるため、あとから修正するのは容易ではありません。
そのため、失踪宣告をおこなう際は、特に慎重に判断しましょう。
参考:裁判所「失踪宣告」
まとめ【相続人と連絡が取れないときは早めの対応が鍵】
相続人と連絡が取れないまま放置すると、不動産の名義変更や預金の払い戻しができず、手続きが長期化してしまいます。
場合によっては、税金の特例が使えなくなり、多額の相続税を負担しなければならないかもしれません。
しかし、戸籍附票の確認や不在者財産管理人の選任、遺産分割調停、失踪宣告など、状況に応じた対処法を取ることで解決の道は開けます。
大切なのは、放置せず、早期に専門家へ相談して最適な方法を選ぶことです。
相続でお困りの方は、税理士法人Farrow Partnersまでお気軽にご相談ください。






