税務・会計
節税するとお金がなくなる!?
お金が減ってしまうメカニズム
決算前になると、節税策の検討がよく行われます。そして節税策として、決算賞与を支給する、30万円未満の資産を取得する、広告宣伝を行うなどの手法を採ることがあります。
では、こういった手法を採ったとき、会社のお金はどのようになるのでしょうか?具体例を挙げて解説します。
【説例】
- 法人の税引前利益:1,000
- 法人税率:30%
- 節税策として、追加で200の経費を支出した
【お金の動き】
① 節税策(200の追加支出)を行わない場合
税金:1,000×30%=300
残った資金:税引前利益1,000ー税金300=700
② 節税策(200の追加支出)を行った場合
税金:(1,000ー200)×30%=240
残った資金:税引前利益1,000ー追加経費200ー税金240=560
いかがでしょうか。節税策を行わない場合、会社に残る資金は700であるのに対し、節税策を行った場合は資金が560しか残らないのです。
経費で使う200が会社経営にとって有効なものであれば、手元資金が減ったとしても支出する意味はあるのかもしれません。しかしながら、税金を減らす目的で無意味な支出をすると、節税策を実行しないときに比べて手元資金は減ってしまうのです。
したがって、特に有効な資金の使い道がない場合、無理に利益を圧縮せずにそのまま税金を支払うのが、手元に資金を残す秘訣なのです。
資金が減らない節税策もある
上記のように、経費を使った節税を行うと、かえって資金が減少するという現象になりました。
ただし、資金を減少させずに税金だけ減らす方法もあるのです。それは、税額控除制度等を用いた節税です。
例えば所得拡大促進税制という制度は、前年度より当年度の給与等の支給額を増加させた場合、その増加額の一部を法人税から差し引くことができる制度です(この適用を受けるには、一定の要件を満たす必要があります)。
これは給与等の支給額が増加していれば法人税が安くなるので、特別な追加支出は不要なのです。
こういった制度は、これ以外にもいくつか用意されていますので、決算までに検討し、戦略的に使いたいところです。
節税を行う目的は?
節税は、何のために行うのでしょうか?
おそらくほとんどの経営者は、法人税を安くしたいというよりも、会社に資金を残しておきたいと考え、それが「節税」という表現になっているのだと思います。
そのため、上記のメカニズムを理解した上で、正しい節税を行いたいものです。