不動産投資が節税にならないのはなぜ?失敗する理由と賢く節税効果を出せるケースを解説

不動産投資で本当に節税できるのか、できないのか、情報があいまいで判断に迷っている方もいらっしゃるでしょう。
そこで本記事では、不動産投資は本当に節税にならないのか、その理由や、節税ができるといわれる仕組みを具体的に解説します。
さらに、節税効果が出やすいケースや、確定申告や青色申告、法人化、経費計上など節税効果を高める実践方法も紹介。
本記事を読めば、税金面のリスクを理解しつつ、資産形成や長期的な収益戦略に役立つでしょう。

 

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不動産投資は節税にならない?そう言われる理由とは

不動産投資は節税にならないのでしょうか

「不動産投資は節税になる」と耳にして、不動産投資に興味を持つ方もいるでしょう。

一方で、不動産投資は節税にならないという情報もあり、どちらが正しいのかわからないと悩んでいる方もいらっしゃるのではないでしょうか。

結論、不動産投資は、必ずしも節税になる投資ではありません。

一時的に税負担を軽くできるケースはありますが、長期的に見るとその効果は薄れていく場合がほとんどです。

不動産投資はあくまで「資産運用」であり、「節税対策」だけを目的に始めるのはおすすめできません。

本章では、不動産投資が節税にならないといわれる理由をわかりやすく解説します。

赤字が出なければ節税効果は発生しない

不動産投資で節税ができるのは、家賃収入より経費が多く、赤字が発生した場合のみです。

たとえば、家賃収入が年間300万円、経費(減価償却費、ローン利息、管理費など)が350万円だった場合、50万円の赤字が出ます。

この赤字を給与所得など他の所得と相殺できるため、結果的に所得税や住民税が減る仕組みです。

 

しかし、物件の収益性が高く黒字になると、この損益通算が使えなくなり、節税効果は発生しません。

つまり、不動産投資で利益が出ている限り、節税はできないのです。

減価償却の終了で節税効果が年々薄れていく

減価償却とは、建物などの資産価値が年数とともに減っていく分を、毎年少しずつ経費として計上できる仕組みです。

建物部分は年数とともに価値が下がるため、減価償却費として経費計上できます。

たとえば、木造住宅なら法定耐用年数が22年ある(出典:国税庁 主な減価償却資産の耐用年数表)のですが、この期間毎年、建物価格の一部を経費にできるため、結果的に節税になりうるのです。

 

しかし、この減価償却費は永遠には続がず、耐用年数を過ぎると計上できなくなり、経費が減少します。

経費が減ると、その分だけ所得が増えるため、納税額も増えるのです。

つまり、初期の数年間は節税効果を感じやすいものの、長期保有するほどその恩恵は小さくなっていきます。

減価償却には限度額がある

減価償却の計上には「限度額」があります。

建物価格を超えて償却する処理はできず、たとえば、建物部分が2,000万円であれば、その範囲内でしか減価償却費を計上できません。

また、土地部分は減価償却の対象外なので、購入額の全てが節税に繋がるわけではないのです。不動産投資を「長期的な節税対策」と誤解すると、後に思わぬ税負担に直面するリスクがあります。

ローン残高の減少に伴い、経費としての利息が減少する

不動産投資の経費の中で大きな割合を占めるのが「ローン利息」です。

たとえば、5,000万円のローンを組んだ場合、初期のうちは利息が年間100万円以上あっても、返済が進むにつれて利息部分は減っていきます。

元本返済分は経費にできないため、ローン残高が減るほど経費としての利息が減少し、結果として所得が増加するでしょう。

つまり、ローンを返すほど「節税効果が下がる」構造になります。

長期的に見ると節税ではなく、税負担増に転じる可能性もあるのです。

内部リンク:税務顧問

不動産投資による節税の基本的な仕組み

不動産投資による節税の基本的な仕組みを解説します

不動産投資は、必ずしも節税にはなりません。

ただ、経費や減価償却費を活用すると、所得税や住民税を抑えられるケースがあります。

そこで本章では、不動産投資による節税の基本的な仕組みをみていきましょう。

損益通算で所得税や住民税を軽減する仕組み

不動産投資で節税効果を得る代表的な方法は、損益通算(参照:国税庁 No.2250 損益通算)になります。

損益通算とは、不動産所得で赤字が出た場合に、その赤字を給与所得など他の所得と相殺できる制度です。

たとえば、サラリーマンが年収600万円、税金計算上の所得が500万円とすると、通常はその金額に対て所得税や住民税が課されます。

 

しかし、不動産投資で年間50万円の赤字が出れば、その分を差し引き、所得450万円として計算できるのです。

結果、課税対象額が減るため、所得税や住民税の負担が軽くなります。

なお、損益通算は一時的な税金対策として有効ですが、黒字化すると使えなくなる点には注意しましょう。

減価償却による課税所得の圧縮効果

たとえば、建物価格が2,000万円、耐用年数が20年の場合は、その期間毎年100万円を減価償却費として経費計上できます。

そうすれば、実際には現金の支出がないにもかかわらず、経費が増えるため、課税対象となる所得圧縮になるでしょう。 

結果、所得税や住民税の負担を抑えられます。

 

特に新築や築浅物件では減価償却額が大きくなる傾向があり、投資初期の節税効果が高いです。

ただし、耐用年数を過ぎると償却できなくなるため、長期的には節税効果が薄れる点は理解しておきましょう。

ローン利息や管理費などの経費計上で税負担を減らす

不動産投資では、家賃収入から経費を差し引いた不動産所得に対して税金がかかります。

この経費に含まれるのが、ローンの利息、管理費、修繕費、固定資産税、保険料などです。

たとえば、年間家賃収入が300万円であっても、ローン利息が50万円、管理費や修繕費などが80万円かかれば、実際の課税対象は300万円−130万円=170万円となります。

つまり、経費が多いほど課税所得が減り、結果として税金も少ないです。

 

ただし、元本返済分は経費にできないため、「経費の範囲」を正しく理解しておかなければなりません。

適切に経費を計上すれば、税負担を合法的に抑えられるでしょう。

相続税の節税

不動産投資用の物件は、現金をそのまま相続するよりも相続税の節税効果が期待できます。

その理由は、不動産の相続税評価額が実際の市場価格(時価)よりも低く算定されるためです。

たとえば、時価1億円のマンションを所有しているケースをみてみましょう。

時価が1億でも、不動産の相続税評価額は約7,000万円と見なされる場合、現金で1億円を相続するよりも3,000万円分の課税対象が減ります。

さらに、その物件が賃貸用であれば、「貸家建付地」や「借家権割合」により評価がさらに下がる可能性があるのです。

結果、相続時の課税対象額が圧縮され、相続税を効果的に抑えられます。

参照:No.4124 相続した事業の用や居住の用の宅地等の価額の特例(小規模宅地等の特例)

参照:No.4602 土地家屋の評価

贈与税の節税

不動産投資用の物件を活用すると、贈与税の負担を抑えることも可能です。

現金はその金額がすべて贈与税の対象になりますが、不動産を贈与する場合は、評価額が時価よりも低く算定されるため課税額を抑えられます。

たとえば、時価5,000万円のアパートの評価額が3,500万円の場合、3,500万円が贈与税計算の基準です。

また、親が保有する不動産の一部を毎年少しずつ贈与する「持分移転」という方法もあります。

年間110万円の贈与税非課税枠を活用すれば、時間をかけて資産を移し、税負担を軽減できるでしょう。

内部リンク:税務顧問

不動産投資で節税効果が出せるケース

不動産投資で節税効果が出せるケースはどのようなケースでしょうか

不動産投資による節税は、誰でも同じように効果が出るわけではありません。

節税効果が大きく現れるのは、投資の状況や収入の条件によって異なります。

特に所得が高い人や初年度に経費が多く発生するケースでは、税金の軽減効果が大きくなりやすいでしょう。

また、物件の種類や投資の運営方法によっても差があります。

本章では、不動産投資で節税効果が出せる具体的なケースをみていきましょう。

高所得のサラリーマンや個人事業主

不動産投資による節税効果が最も大きく現れやすいのは、高所得のサラリーマンや個人事業主になります。

そのわけは、所得が高いほど、所得税率も高くなるため、赤字による損益通算で減税できる額も大きくなるからです。

たとえば、給与所得が年収1,000万円のサラリーマンが、不動産投資で年間100万円の赤字を出した場合、該当の赤字分が課税所得から差し引かれるでしょう。

結果、所得税率が33%程度なら、33万円もの税金を節約できる計算になります。

高所得者ほど節税効果が目に見えやすく、投資の初期段階で大きなメリットを享受できるケースが多いです。

参照:国税庁 No.2260 所得税の税率

 初年度に多額の経費(修繕や購入費用など)が発生する場合

不動産購入や運営の初年度に大きな経費が発生すると、節税効果が出やすくなります

たとえば、購入時にリフォーム費用として200万円、登記費用や仲介手数料として50万円がかかった場合、合計250万円を経費として計上可能です。

この経費が赤字を生み出すと、給与所得などと損益通算できるため、初年度の所得税や住民税を大幅に抑えられるでしょう。

また、設備投資や大規模修繕など、一度に大きな経費が計上できるケースでは、減価償却と合わせてさらに課税所得を圧縮できるため、初年度の節税メリットが特に大きくなります。

築古や中古物件を活用して減価償却を有利に使うケース

築古や中古物件は、減価償却費を効率的に計上できる点で節税効果が高い場合があります。

新築物件は建物価格が高く、耐用年数も長いため、毎年の減価償却費が比較的均等に分散されやすいです。

一方、中古物件は取得価格が低くても、耐用年数に応じて残存耐用年数を短縮できるため、初年度から多くの減価償却費を計上できます。

たとえば、築25年の中古マンションを購入すると、残耐用年数に応じて短期間で減価償却費を経費に計上でき、初期の数年間で課税所得を大幅に圧縮できるでしょう。

将来的に法人化を見据えた不動産経営を行う人

不動産投資を法人化する可能性を見据えて経営している場合も、節税効果を高めやすいケースです。

法人化すると所得分散や役員報酬の調整、損益通算など、個人では使えない税務上の手法が利用できるようになります。

たとえば、将来法人化を考えている投資家は、複数物件を購入し初期に多額の減価償却費や経費を計上しましょう。

そうすれば、個人時代でも一定の節税効果を得られるでしょう。

 

その後、法人に切り替えると、さらに所得を分散させたり経費を戦略的に計上したりできるようになります。

結果、長期的に見て節税メリットを最大化できるのです。

内部リンク:会社設立

不動産投資で節税効果を高める実践方法

不動産投資で節税効果を高める実践方法を解説します

不動産投資で節税効果を高めるには、単に物件を保有するだけでは実現できません。

節税の仕組みを理解し、計画的に運用する必要があります。

確定申告や経費計上、法人化などの手段を上手に活用すれば、税負担を効果的に減らせるでしょう。

また、複雑な税制や会計処理を正しく理解すれば、節税を長期的に持続させる手助けになるかもしれません。

そこで本章では、不動産投資で節税効果を最大化する具体的な方法を解説します。

確定申告と青色申告の活用で控除を最大化

不動産投資で節税効果を高めるには、正しい確定申告が欠かせません

特に青色申告を活用すれば、最大65万円の控除を受けられるほか、赤字を3年間繰り越せる損益通算のメリットもあります。(参照:国税庁 No.2070 青色申告制度

たとえば、年間200万円の不動産所得赤字がある場合、青色申告で給与所得と損益通算すれば、その年の課税所得を大幅に圧縮できるでしょう。

さらに、家賃収入や経費の記録を日々正確に整理しておくと、控除漏れを防ぎ、税負担を最小限に抑えられます。

確定申告の制度を最大限活用して、節税効果を最大化させましょう。

法人化による所得分散と税率コントロール

個人での不動産投資には所得税の累進課税が適用されるため、所得が増えるほど税率も上がるものです。

そこで法人化を検討すると、節税効果をさらに高められます。

法人税率は個人の最高税率より低いため、役員報酬を調整すると所得分散できるでしょう。

たとえば、年収1,200万円相当の不動産所得を法人に移すと、個人では所得税40%以上が課されます。

 

しかし、法人税や役員報酬の形にすれば、税率を20〜30%程度に抑えられるでしょう。

法人化を戦略的に利用して、将来的な事業拡大や資産管理も考慮するのが肝心です。

参照:国税庁 No.5759 法人税の税率

経費計上のルールを正しく理解し、節税を持続させる

不動産投資の節税は経費計上の正確さに大きく依存します。

ローン利息、管理費、修繕費、減価償却費などは漏れなく計上して、課税所得を圧縮しましょう。

たとえば、年間家賃収入300万円に対してローン利息50万円、管理費や修繕費80万円、減価償却費70万円を計上します。

そうすれば、課税所得は100万円まで圧縮されるでしょう。

 

しかし、元本返済や個人的支出は経費にできないため、ルールを正しく理解しなければなりません。

経費の範囲を正確に把握し、毎年適切に計上していれば、節税効果を長期的に持続させられるでしょう。

税理士や不動産専門家に相談して最適化を図る

節税効果を最大化するためには、専門家の助言を有効活用しましょう。

税理士や不動産コンサルタントは、最新の税制情報や経費計上のポイント、法人化のタイミングなどを的確にアドバイスできます。

たとえば、減価償却費の計上方法やローン利息の扱いを誤ると、本来得られるはずの節税効果が失われるかもしれません。

専門家に相談すれば、自分の投資状況に合わせた最適な節税プランを作成でき、リスクを抑えつつ効果を最大化できるでしょう。

特に初めて複数物件を運用する場合や法人化を検討する場合は、プロのサポートが不可欠です。

内部リンク:経営改善支援

まとめ【節税効果を「目的」にせず「結果」として得るのが賢い投資】

不動産投資は、適切に運用すれば節税効果を得られる場合もありますが、赤字狙いや短期的な節税目的での投資はリスクが高く、かえって損失につながる可能性があります。

節税はあくまで副次的なメリットであり、本来の目的は「長期的な安定収益の確保」と「資産形成」です。

投資を始める際は、税金面だけに注目せず、収益性や資産価値の観点を重視しましょう。

節税に惑わされず、計画的な資産運用を心がけることが、成功への近道です。

 

なお税理士法人Farrow Partnersでは、お客様のお金の悩み、節税、税務調査や資金繰りなどの無料相談を承っております。

どうぞお気軽にご相談ください。

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