日々、会社の経営について試行錯誤されている経営者の皆様は、黒字でも手元資金が足りず、支払いに困る状況や資金ショートの不安を抱えているかもしれません。
そこで本記事では、資金繰りとは何か、なぜ資金不足が起こるのか、さらに悪化の原因や即実行できる改善方法を詳しく解説します。
本記事を読めば、日々の現金管理や入金・支払いのタイミング調整、在庫や経費の見直しなど、実践的な資金繰り改善方法がわかるでしょう。
ポイントを理解し、経営の安定化に役立ててください。
なお、税理士法人Farrow Partnersでは、資金繰りの改善などに関する無料相談を承っております。
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資金繰りとは何でしょうか
資金繰りとは、企業が日々の支払いに必要な現金をどのように確保し、運用していくかを管理することを指します。
どれだけ売上や利益があっても、手元資金が不足すれば事業は続けられません。
資金繰りの理解は、経営を安定させるための最も基本的かつ重要なポイントです。
まずは、その定義やキャッシュフローとの違い、そして利益が出ていても資金が足りなくなる理由を整理していきましょう。
資金繰りとは、企業が日常の取引や投資活動、借入や返済などを通じて、現金の流れを管理することです。
目的は、支払いや仕入れなどの資金需要に対し、常に十分な現金を確保する点にあります。
一方で、キャッシュフローとは、一定期間における現金の増減を示す会計上の指標です。
資金繰りは日々の運営に焦点を当てるのに対し、キャッシュフローは企業の資金状態を期間で評価する点が異なります。
資金繰りは「短期的な現金管理」、キャッシュフローは「全体的な資金動向の分析」と区別しましょう。
「黒字倒産」という言葉があるように、利益が出ていても資金が不足するケースは珍しくありません。
その主な原因は、利益と現金の動きが一致しないためです。
売上が計上されても代金が後払い（売掛金）であれば、現金はすぐに入ってきません。
たとえば、不動産管理会社のケースをみてみましょう。
不動産管理会社が、1か月で売上として家賃収入500万円を計上していたとします。
しかし、入居者の家賃が口座振込で翌月払いの場合、現金としてはまだ手元に入ってきません。
一方で、仕入れや人件費、家賃などの支払いは現金で先に出ていきます。
たとえば、スタッフの給与が300万円、物件の維持管理費100万円、事務所の家賃が50万円あったとします。
前述のように家賃収入が500万円あるとすれば、会計上は上記を差し引き利益150万円が出ているものの、実際の手元現金があるわけではありません。
そうなると、支払いが滞るリスクが生じます。
さらに、設備投資や税金支払いなど一時的な資金需要が重なると、利益が出ていても手元資金が不足するでしょう。
帳簿上で利益が出ていても資金が足りなくなるカラクリです。
したがって、経営には損益計算だけでなく、現金の流れを意識した資金繰り管理が欠かせません。
内部リンク：資金繰り予定表とは？作り方から経営に活かす方法まで徹底解説
資金繰りが悪化する主な原因は何でしょうか
資金繰りが悪化する原因は、単に「売上が少ない」だけではありません。
実際には、黒字経営であっても資金ショートに陥るケースが多く、経営者の多くがそのギャップに悩まされています。
資金繰りを悪化させる要因は、日々の取引や経営判断の中に潜んでいるものです。
たとえば、売掛金の回収遅延や、仕入や支払いのタイミングのズレ、過剰な在庫、さらには急速な事業拡大による資金不足などが該当します。
ここでは、資金繰りを圧迫する代表的な4つの原因をみていきましょう。
売掛金の回収遅延は、資金繰りを悪化させる一般的な要因の一つです。
商品やサービスを提供した時点で売上は計上されますが、入金が後日となる場合、その間の資金は実際には手元にありません。
取引先の支払いが予定より遅れると、その分の資金が使えず、仕入れや人件費、家賃などの支払いに支障が出る恐れがあります。
特に中小企業では、数件の回収遅延が命取りになるかもしれません。
こうした事態を防ぐためには、取引先の信用調査を行い、支払条件を明確に取り決める対策が重要です。
また、請求書の早期発行や、ファクタリングの活用、支払い条件の短縮交渉など、
日々の入金管理を徹底し、遅延発生時には迅速に対応する体制を整えておきましょう。
仕入れ先への支払いサイト（支払期日）と、販売先からの入金サイト（入金期日）のズレも、資金繰りを悪化させる典型的な原因です。
たとえば、仕入れの支払いが月末締め翌月末払いである一方、売掛金の回収が翌々月になると、少なくとも1か月分の資金ギャップが生じます。
このギャップを埋めるためには、一時的に手元資金を取り崩すか、借入に頼らざるを得ません。
仕入れと販売の支払・入金タイミングを把握し、資金の流れを可視化する点が重要です。
取引条件の見直しによって支払期日を延ばしたり、早期入金割引を設定したりすると改善できるでしょう。
また、入出金を月単位ではなく週単位で管理したり、資金ショートの予兆を早めに把握するなどのタイミング管理が欠かせません。
在庫の持ちすぎも資金繰りを悪化させる大きな原因です。
在庫は将来的に売上を生み出す可能性がある一方で、現金が「商品という形で眠っている」状態でもあります。
過剰な在庫は、仕入れや製造に費やした資金を長期間拘束し、他の支払いに回す資金を圧迫するでしょう。
また、在庫には保管コストや劣化・陳腐化のリスクも伴うため、実質的な損失につながることも少なくありません。
さらに、在庫回転率を定期的にチェックし、滞留在庫を早期に処分したり、割引き販売する方法も有効です。
中小企業では、「売れると思って仕入れたが売れ残った」というケースが多く見られるため、データに基づいた在庫コントロールが資金繰り改善の要です。
事業が急成長すると、一見順調に見えますが、資金繰りの面では深刻な問題を招く可能性があります。
売上が急増すると、仕入や人件費、設備投資、在庫確保などに必要な資金が一気に膨らむでしょう。
しかし、売上代金の入金は後日になるため、実際のキャッシュフローはマイナスに転じるかもしれません。
急成長期には、資金の流れを細かくシミュレーションし、先行投資に対してどの程度の余裕資金を確保できるかの見極めが大切です。
また、金融機関との関係を早期に構築し、必要に応じて短期借入や運転資金の融資を受けられる体制整備も欠かせません。
成長スピードと資金の循環バランスを意識し、「成長に見合う資金管理」を行うと、安定した経営基盤を維持できます。
内部リンク：会社の資金繰りが厳しいときに取るべき対応策！資金調達の種類も解説
今すぐできる資金繰り改善方法を解説します
資金繰りの改善は、企業の経営を安定させるうえで欠かせない取り組みです。
売上を増やす取り組みも重要ですが、日々のキャッシュフローを見直すなど、今すぐに実行できる改善策も数多く存在します。
本章では、今日すぐにでも取り組める「資金繰り改善方法10選」を紹介します。
売掛金の回収から経費削減、融資・補助金の活用、専門家への相談まで、即効性のある手段を具体的に解説します。
資金繰り改善の基本は、現金の回収を早める点です。
売掛金の入金が遅れるほど、資金ショートのリスクが高まります。
そこで有効なのが、前受金や分割請求の活用です。
たとえば、契約時に一部の代金を前払いで受け取る「着手金制度」を導入したり、大口案件の場合は納品ごとに請求する「分割請求方式」を採用したりすると、早期に現金を得られます。
また、請求書の締め日を早めて発行し、入金期日を明確に設定したり、支払遅延が常習的な取引先に対しては、信用条件を見直す勇気をもつのも肝心です。
支出のタイミングを後ろ倒しにする方法は、資金繰りの余裕を生むのに有効です。
取引先との信頼関係を維持しながら、支払サイト（支払期日）の延長を交渉すると、資金の滞留期間を短縮できます。
特に、取引実績が長く信用がある場合なら、一定の理解を得られるでしょう。
ただし、単に支払を遅らせるだけでなく、誠実な説明と将来の支払計画を提示する姿勢が大切です。
また、支払サイトが短い仕入先と、交渉によってバランスを取ると、キャッシュフローを最適化できるでしょう。
支払期日の管理、入金タイミングの意識が重要です。
在庫は「眠っている現金」とも言われます。
過剰な在庫を抱えると、仕入れや製造に使った資金が回収されず、キャッシュフローを圧迫しかねません。
まずは在庫の現状を正確に把握し、販売実績の低い商品や長期間動いていない在庫を洗い出しましょう。
また、販売予測データをもとに仕入量を調整し、在庫回転率を高める対策が欠かせません。
過剰在庫を削減すると、保管コストや廃棄リスクも減少し、資金効率が向上します。
さらに、クラウド在庫管理システムを導入すれば、在庫の見える化を実現し、常に「適正在庫」を維持できるでしょう。
経費削減は資金繰り改善の定番策ですが、やみくもに削るのではなく、優先順位をつけるようにしましょう。
まずは固定費（家賃、通信費、保険料など）と変動費（広告費、交際費など）を分類し、費用対効果を分析します。
たとえば、直接売上につながらない支出や、同じ効果がより低コストで得られる支出は見直しの対象です。
また、サブスクリプション契約や不要なサービスを洗い出し、解約するだけでも毎月の固定費を削減できるでしょう。
ただし、人材教育や営業活動など、将来の成長に寄与する投資的経費は削りすぎないようにすべきです。
経費を「減らす」だけでなく、「生かす」視点を持つと、持続的な資金繰り改善が実現します。
会社に眠る使われていない設備や不動産、古い車両やパソコンなどは、資金繰り改善のチャンスです。
特に、遊休資産は帳簿上は資産でも、実質的には資金を生み出さない「デッドアセット（死んだ資産）」になります。
これらを売却すれば即座に現金を得られ、売却益が出る場合は、財務体質の改善にもつながるでしょう。
また、リースやレンタルを活用して設備投資を抑える対策も有効です。
さらに、不要な土地や倉庫をサブリースに出すなど、資産を「使って稼ぐ」工夫も考えられます。
資産を定期的に棚卸しし、「眠っている資金」を現金化するのが、資金繰りを健全化する近道です。
資金が不足している時は、金融機関との関係構築が重要です。
まずは取引銀行に資金繰りの現状を正直に伝え、追加融資やリスケジュール（返済猶予）の相談を行いましょう。
金融機関は「早めの相談」を評価する傾向があります。
また、借入残高が多い場合には、既存融資の金利引き下げ交渉も有効で、わずかな金利差でも年間で大きなコスト削減になります。
事業計画書や資金繰り表を用意し、今後の改善見通しを示すと、交渉がスムーズです。
資金調達は「困ってから」ではなく、「余裕があるうち」に動きましょう。
売掛金の回収を待たずに資金化できるファクタリングは、即効性のある資金繰り改善策です。
売掛債権を専門業者に売却すると、最短即日に現金化できる場合もあります。
特に、急な支払いに備えたい時や、短期的な運転資金を確保したい場合に有効でしょう。
また、近年はオンライン完結型のビジネスローンも充実しており、審査から入金までのスピードが速い点が魅力です。
ただし、ファクタリングには手数料が発生するため、利用頻度や金額に注意しましょう。
資金調達手段を多様化し、状況に応じて最適な方法を選ぶと、柔軟な資金管理が可能になります。
資金繰り改善のためには、国や自治体の補助金・助成金を賢く活用しましょう。
たとえば、「小規模事業者持続化補助金」は、販路開拓や設備投資にかかる費用の一部を補助してくれる制度で、多くの中小企業が利用可能です。（参考：中小企業庁 小規模事業者持続化補助金について）
その他にも、雇用維持やデジタル化支援など、さまざまな分野で助成制度があります。
これらは返済不要の資金なので、経営改善や新事業展開の強力な後押しになるでしょう。
申請には事業計画書や見積書などの書類が必要ですが、認定支援機関や商工会議所のサポートを受ければ、手続きがスムーズに進められます。
定期的に最新情報をチェックし、利用できる制度を積極的に活用しましょう。
資金繰りが一時的に厳しいときは、税金や社会保険料の「納付猶予制度」を活用すると、資金流出を一時的に抑えられます。
たとえば、国税庁や地方自治体は、災害や業績悪化などで資金が不足している場合には、最長1年間の納付猶予が可能です。
また、日本年金機構でも社会保険料の分納や猶予制度を設けています。（参照：日本年金機構 国民年金保険料の免除制度・納付猶予制度）
ただし、無断で滞納するのではなく、事前に正式な手続きを行うのが前提です。
税務署や年金事務所に早めに相談すれば、柔軟に対応してもらえるケースもあります。
合法的に支払いを先延ばしすると、資金繰りの一時的な改善が図れるでしょう。
資金繰りの課題は、経営者一人で抱え込むよりも、専門家に相談する方が解決の糸口が見つかるでしょう。
税理士や認定支援機関は、資金繰り表の作成支援や、金融機関への融資相談、補助金申請のサポートなど、幅広い知見を持っています。
第三者の視点で現状を分析してもらえば、見落としていた改善ポイントが明らかになりやすいでしょう。
また、税理士は節税や資金管理の専門家として、無理のない返済計画や資金調達戦略を提案してくれます。
さらに、認定支援機関を通じた融資申請は、金融機関からの信頼性が高まるメリットも。
外部の力を上手に借りて、資金繰りの不安を早期に解消し、事業の安定化を図りましょう。
内部リンク：会社の資金繰りが厳しいときに取るべき対応策！資金調達の種類も解説
本記事では、資金繰りの基本から黒字でも資金不足になる原因、資金繰り悪化の主な要因、そして今日から実践できる10の改善方法までを紹介しました。
資金繰りを正しく把握すると、支払いの滞りや黒字倒産のリスクを防ぎ、経営の安定化が期待できます。
しかし、複雑な資金管理や金融機関対応、補助金・融資活用などは個人だけで行うのは難しいかもしれません。
実際の改善には、税理士や認定支援機関など専門家に相談する方法が、確実な成果を得る近道です。
なお税理士法人Farrow Partnersでは、資金繰り予定表作成などに関する無料相談を承っております。
一人で抱え込まず、まずはお気軽にご相談ください。現状を整理し、改善の道筋を一緒に考えましょう。
